世に問う 何の意あって 碧山に栖むと
笑うて答えず 心自ら閑なり
桃花流水 杳然として 去る
別に天地の 人間に非ざる有り
詩文の意味
人は私に、どういうつもりでこのようなみどり山奥に住むのかと尋ねる。
わたしは笑って答えない。他の人が何と思おうと私の心はゆったりとのどかである。
見給え、美しい桃の花びらが清らかに流れる水に浮かんで、はるか遠くに流れ去っていくのを。
このような様子を見るにつけ俗世間を離れた別の天地があるということを痛感するのである。
作者 李白（盛唐７０１〜７６２）
字は太白、号は青蓮居士。生まれは明確ではないが、幼少の頃から四川省に住み、
剣術を好んだ。若いときは遊侠の仲間に入り放浪の生活を送った。
玄宗皇帝に詩才を認められ宮廷詩人となり自由奔放な気風を備えた天才詩人であったが、
豪放な性格のため酒に耽り都を追われた。詩聖杜甫に対して詩仙と称される。
言葉の意味
碧山：：みどり濃い山。閑なり：：のどかである。
桃花流水：：流れに散って浮かぶ桃の花。理想郷のシンボル。
陶淵明の「桃花源記」にもとずく句と思われる。
杳然：：遥かなさま。天地：：世界。 人間：：俗世
戻る